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新オフィス設計者インタビュー 建築家 木村寧生 Yasuki Kimura
木村 寧生 Yasuki Kimura | |
1993年 | 茨城県水戸市生まれ |
2017年 | 早稲田大学 創造理工学部 建築学科 卒業 |
2019年 | 早稲田大学 理工学術院 創造理工学科 建築学専攻 古谷誠章研究室 修士課程修了 |
2019年〜2020年 | 早稲田大学 理工学術院 創造理工学科 建築学専攻 古谷誠章研究室 博士後期課程退学 |
2019年〜2020年 | 北京大学留学 |
2020年〜2021年 | 藤本壮介建築設計事務所 |
2021年〜 | NASCA一級建築士事務所 |
2021年〜 | KIMURA YASUKI |
Q,自己紹介をお願いします
建築家の木村寧生と申します。
大学院卒業後、現在は設計事務所NASCAに勤めながら、個人として空間デザイン・設計・監理の仕事を請け負っています。
▶ KIMURA YASUKI
Q,オファーを受けたときの感想を教えてください
今年3月頃の話で、すごく光栄に感じた記憶があります。
アシロ様のオフィス移転プロジェクトメンバーに中学時代の同級生がいて、彼がコンペ参加のオファーをしてくれました。
中学卒業以降、SNSでつながってはいたものの目立つ交流はなかった中、昨年私が設計した住宅リノベーションの見学会に来てくれたことがきっかけだったようです。
会社としてコンペに参加したことはありますが、個人で参加することは初めてだったので、とても意気込みました。
Q,コンペを勝ち抜いたときの感想を教えてください
何といってもまずは嬉しかったです。当然、それだけの責任を伴うことなので、改めて背筋が伸びる思いでもありました。
また今回は私の他に、設計・施工として株式会社TRUSTさんと共同参加させていただき、すごく良いチームに恵まれたなと思います。
タイトなスケジュールの中で参画を快諾していただきましたし、アシロ様や私のアイデア・理想に対して的確かつ迅速に動いていただけたので大変助かりました。
Q,新オフィスの一番の見所を教えてください
やはり入口からエントランスホール、そして会議室・通路までのシークエンス(連続する流れ・導線)です。
後述しますが、アシロ様のビジョンを体現する内装にできるか、それをどれだけビジターの体験に落とし込めるかという点を集中して考えました。
また入口と会議室・通路の間にあるエントランスホールに、曲線を持つ空間を作ることで、没入感を演出できたと思います。
Q,目立たないながらも密かなこだわりを教えてください
アルミ入巾木(イリハバキ)です。
巾木とは床と壁の直角の部分において、壁側に施されるものなのですが、一般的には6cmくらいのビニールや木製で、数ミリ程度出っ張ったものを貼り付けます。
施工跡を隠したり強度を補強したりする機能があるのですが、今回はよく普及している出っ張ったタイプではなく凹んだ入巾木を採用しました。
そうすることで視覚的なノイズを極力減らし、コンセプトをより体験してもらえるようになるんです。
通常の巾木と比較してコストを要するのですが、プロジェクトメンバーの皆様が設計の意図を汲んでくださり、コスト削減においてはこうした部分を残してくださいました。
建築設計とは設計者と施主の一期一会の出会いで、お互いに協力すると良い建築に仕上がるのだなと実感できる体験でもあります。
Q,ビジターエリアについて教えてください
コンペのオファーをいただいた時点で、どういったオフィスにすべきか考えるためにアシロ様のコーポレートサイトを拝見しました。
企業名がヨミノアシロという深海魚に由来すること、「アシロに関わる人を誰よりも深く幸せにすることでよりよい社会の実現に貢献する。」といった理念などを拝見し、建築空間にそれらを表現したいと考え、今回の設計に至ります。
またインパクトあるエントランスや、コンセプトがある会議室などのリクエストをいただいたので、それらがより際立つように「深海に潜り込む」というテーマにしました。
会議室のアートが見える丸窓などは、深海に覗く洞窟の奥にある新たな発見などを表現しています。
Q,執務室エリアについて教えてください
執務室はビジターエリアと比較して、質実剛健。シンプルさや使いやすさを重視しています。
例えばフォンブースを2箇所に分けて設置したり、クローク・リフレッシュスペース・キャビネットスペースを平行に作り無駄な空間を削ぎ、導線を妨げない設計を目指しました。
またリフレッシュスペースはディスプレイやカウンター、ソファなどを設置することで、人それぞれに最適なくつろぎ方ができるようにさまざまな設備を設置しています。
Q,アシロならではの大変だった点はありますか?
21年の株式上場に代表されるように、非常に勢いがある企業だと思うので、それらを後押しできるようなオフィスにしなければいけないというプレッシャーはありました。
一方で主に窓口として対応してくださったプロジェクトメンバーの皆さんは、すごく信頼・リスペクトをしてくれているなと感じましたし、気持ち良く仕事ができたと思います。
そういった意味では大変なことはなく、理念にある通り私も関わった人物として、幸せにしていただくことができました(笑)。
Q,全体を通して印象的だったことを教えてください
プロジェクトメンバーの皆さんとコミュニケーションをとりつつ、試行錯誤を重ねながら設計できたことがすごく楽しかったです。
設計の検討をしている途中で、エントランス空間全体をゼロベースから考え直すタイミングがあったのですが、そうした紆余曲折を経たからこそ、完成したオフィスの良さを共通認識できているなと思います。
また会議室のアートを、ワークショップとしてアシロ様の社員の方々と作り上げたのですが、これも印象に残る出来事でした。
こうした体験をしていただくことでオフィスに愛着が湧きますし、参加いただいた皆さんが楽しんでくださり、良い機会を提供できたなと思います。
Q,またアシロのオフィスを作るならどんな設計にしますか?
今すぐにこうしたいと思うことはありません(笑)。
というのも、そのときの社会情勢、会社の状況、社員の方々の気持ちとコラボレーションして設計したいと思っているので、「こうしたい」ということに固執したくないためです。
ただ次もワークショップを開催したいなとは考えていて、アートだけではなく会議室の壁4面すべてを自分たちで作り上げるのも面白いかなと考えています。
また打ち合わせを重ねる度に感じていたのですが、この会社で働く皆さんの魅力をもっと見せていくのも面白いなと感じました。
今のオフィスはビジターエリアと執務室を分けていますが、業務の様子が外から見える渾然一体としたオフィスなど、やってみたいことは沢山あります。
Q,次回もまたお声がけしていいですか?
もちろんです。
今回はアシロ様と一緒に考えることで、私だけでは思いつかないような空間、デザイン設計ができたと思いますし、幸せな楽しい時間を過ごすことができました。
私も更にレベルアップして経験を積むので、是非次回もご一緒できたらと思います!
編集後記
オフィス移転以降、心なしかリモートワークよりも出社を選ぶメンバーの数が増え、社内のコミュニケーションも活発化しているように感じます。
社内の満足度も非常に高く、木村さんと今回のプロジェクトメンバーでなければ作れなかったであろうオフィスとなりました。
プロジェクト始動から約8ヶ月、ご尽力いただいた皆様、本当にありがとうございました!
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